日本薫物線香工業会

堺市

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第1スライド

堺から古寺巡礼

大阪千日前と法善寺

零陵香本舗 薫明堂 古寺巡礼

 大阪は、京都や奈良ほどではないにしても、思いのほか寺社が多い。聖徳太子が建立した四天王寺をはじめ、御堂筋の名前の由来になった南御堂と北御堂、それに織田作之助の小説に度々登場する上町台地は現代でも寺町として寺院が集中する。大阪ミナミの繁華街として良く知られた千日前も、江戸時代から法善寺と竹林寺により千日念仏が唱えられ、その門前町として栄えた事に由来する。

 竹林寺は既に四天王寺の近くに移転し、今では法善寺と三津寺の墓所が残るくらいだが、元々は江戸時代初期、大阪の陣の後に市内の墓所を整理して大規模な千日墓地として整備した事よりこの地域一角を千日前と呼称されることになったようである。その後、大正時代から昭和初期にかけて映画館、演芸場などが立ち並ぶようになり、道頓堀と並ぶ巨大な繁華街になった。



 正式名は天龍山法善寺というが、むしろ水掛不動や法善寺横丁の方が今では良く知られているかも知れない。寛永14年(1637年)に開山した浄土宗の寺院であり、寛永21年(1644年)から千日念仏回向が始まったとされている。道頓堀を少し南に下ったところに法善寺横丁の看板と非常に狭い露地が続いている。その奥に行けば苔むした水掛不動を参拝することができるが、今では商店街の中にひっそりと佇む小規模な寺院といった風情で、むしろ京都の蛸薬師や六角堂を連想させる。夫婦善哉と共に名称だけがすっかり全国区になったが、商店街の雑踏の中のひっそりとした静寂とポケットパークのような雰囲気は、侘しさと感じるか落ち着きと感じるかは人それぞれだろう。

 御堂筋沿いにある三津寺は、聖武天皇の勅命により天平16年(744年)に行基が創建されたと伝えられる古刹だが、気付かなければ通り過ぎてしまいそうなほど、街中に溶け込んだ境内になっている。交差点の名前として三津寺という名前が残されているものの、その境内は決して広くない。特に敷地内にホテルが建っている南御堂が近くにある分、ひっそりとした寺院に感じる。また千日前墓地は離れている上に、こちらもあまり目立たないので、そんなに印象には残らないかも知れない。
 道頓堀から千日前にかけて、大阪の二大歓楽地のひとつでありながら、今でもひっそりと寺院が共存している辺り、とても興味深く感じるが、同時に歴史を読み解くまでもなく慌しい大阪の喧騒の中に埋没して、うっかり見落としがちなところは少し残念にも思う。


法善寺の水掛不動 法善寺横丁の通り 工事中の三津寺